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「金もなければ、美貌もない平凡な女のくせに離縁してどうする。路頭に迷うだけだぞ」
「奥様、早くお茶の用意をしてちょうだい。いつものお茶の葉。わかっているでしょ?」
「リーゼ。早くミレーヌのためにお茶を用意しろ」
大笑いする旦那様と高笑いするミレーヌ。
旦那様もミレーヌものんきなものだ。
派手好きな旦那様は伯爵家の財産を食い潰し、使用人を雇うお金も尽きて、今やただの借金男。
派手で遊び好きな旦那様は現在の経済状況すら把握できていない。
「お断りします」
「ん?」
私がきっぱりお断りするのを見て、旦那様はようやく本気だと気づいたようだ。
「生意気な妻だな。貧乏男爵の父親からお前を買ったのは俺だ。出て行くというのなら、俺がお前を買った金を全額支払え!」
この調子だと、私の実家にお金を請求するに違いない。
そんなこともあろうかと、私はバッチリ用意してあった。
一冊の帳簿を旦那様に渡す。
「なんだ。これは?」
「ご確認ください」
帳簿には私がずっと妻役として、下働きとして、このお屋敷で働いた金額が記されてある。
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