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後は旦那様のサインをもらって、大司教様から離婚を認められたら、別れることができる。
「なにが離縁だ!」
ぐしゃぐしゃに離縁状を丸め、帳簿の時と同じ暖炉に投げ込まれてしまった。
「どうして……!」
「お前のことは好きでもなんでもないが、形だけでも妻は必要だ。貴族としての体裁を守るためにな」
社交界で妻に捨てられた男と、噂されるのが我慢ならないらしい。
旦那様のプライドのためだけに私の離縁は反古された。
「高い金を支払って、こっちは妻にしたんだ。まったく、なにが離縁だ。生意気にもほどがある」
お金に困って私を旦那様に売ったのは実家の両親だ。
私を売ったお金はすでにないだろうし、実家に戻ったとろこで、また金持ちに売られてしまう。
「お金を支払えば、離縁していただけますか?」
離縁状は燃やされてしまったけど、せめて口約束だけでもして欲しかった。
「はははは。大金など、持ってこれるわけがないだろう。生活する力もないくせによく離縁したいなどと、言ったものだ」
「ほら、奥様。早くお茶を持ってきてちょうだい」
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