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二人は私がお金を用意できるわけがないと思っているようだ。
「旦那様。なぜ私がずっと耐えていたかわかりますか?」
「は? 耐えていた?」
――やっぱりこの人はわからないのだ。一度くらい夫として私に愛情を見せてほしかったのだということを。
私は初めて旦那様の前で微笑んだ。
結婚した初日から、ミレーヌしか目に入っていなかった旦那様。
まともに向き合ったのは、今日が初めてかもしれない。
「お金が欲しいなら差し上げますわ。さようなら、旦那様!」
金貨が入った袋を旦那様の顔面に叩きつけてやった。
金色に輝く硬貨は宙を舞い、袋から飛び出して床に散らばった。
呆気にとられた旦那様とミレーヌの顔を背にを向けて、私は堂々と二人の前から立ち去った。
旦那様は私を止めることはできなかった。
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