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「貧乏令嬢が伯爵夫人になれたのだ。むしろ、俺に感謝するべきだろう」
「わたくしの目の前で離縁していただきたかったわ」
「なにを言う! 体裁を保つため、形だけの妻が必要だと言っただろう!」
「まぁ、怖い」
「ああ、ごめんよ。ミレーヌ。これも全部、リーゼが悪いんだ」
王都に屋敷も持てない貧乏貴族、世間知らずの地味な男爵令嬢から渡された離縁状。
腹が立たないわけがない。
帳簿をつけていたとは、とんでもない女だ。
結婚した時は十六歳。
なにもできない小娘と侮りすぎたか!
「どうせすぐに持ち金が尽きるだろう。そこでようやく自分の立場を思い知るはずだ」
「謝ってきたら、前よりこきつかってやりましょ」
しかし、腑に落ちないのが投げつけて来た金貨だ。
投げつけられた金貨の袋をにらんだ。
ミレーヌならともかく、あの貧相な体を売って稼いだとは考えにくい。
「この金貨……どこから手に入れたんだ?」
「どこかの金持ち男から借金でもしたんじゃないかしら」
「俺という旦那がいながら、男から借金とは生意気な!」
「まだそうとは決まってないでしょう。私が調べてあげる」
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