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朱い天空
朱い空の下に、天を突く大きな山がそびえていた。
魔界には、名のない山、川、平原が広がっている。
一説には、現世よりも広いと言われ、時空を超えて出入りする者もいるという。
謎に包まれた世界は、数人の支配者によってある程度の秩序を保っていた。
血と暴力、慟哭、絶望。
時折嵐のように訪れる淀みが、静寂を破り辺りを照らす。
山の頂上に白く丈の長い衣をまとった男が佇んでいる。
「土竜、始めろ……」
山の中腹に顔を覗かせていた、鼻の長い男が頷いた。
「御意!
出でよ!
紅蓮の雷!」
空の彼方から稲光がほとばしる!
網の目のように白い衣の男を包み込み、轟音が響いた!
「ぬううう」
まともに雷を受けた男は、身体のあちこちから黒い煙を上げ、服はビリビリに破けていた。
「泰巌様!」
思わず土竜は叫んだ。
無防備に攻撃を受けた泰巌は、棒立ちになったまま微動だにしない。
目を閉じ、口元は薄く嗤う。
「なかなか、良い衝撃だったぞ」
朱い眼を薄く開き、土竜を一瞥する。
土竜はホッと息をついた。
「泰巌様。
そろそろ国取りを始められてもよろしいのでは」
機嫌が良さそうなので、聞いてみたつもりだった。
だが、泰巌の眦が上がり、牙がむき出しになる。
「貴様。
この俺に意見するつもりか」
語気に背筋を凍らせる強さがあった。
威圧感が増し、呼吸が苦しくなる。
「た、泰巌様。
私が諸国の様子を見てきましょう」
あわてて土竜は平伏した。
「勝手にするがいい」
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