パルファムタイム

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パルファムタイム

 不意に香った、甘く燻ったラズベリーとバニラ。  聞こえるのは自分の心臓が波打つ鼓動と、寸分の狂いもなく刻まれ続ける秒針の音。  私はきっと、期待しないと思っていても期待していたのだと思う。代わり映えのない毎日に彩りを添えてくれる誰かを。  帰り道がわからなくなっても、そっと手を差し伸べてくれる誰かを。  私以外の名前を呼ぶ甘い声の誰かではなく、私の名前を呼ぶ温かい声の誰かを。  永遠と機械的に進むだけの時間だけではない、秒針のように一秒一秒しっかり一緒の時間を刻んでくれる誰かを。  嗚呼。もうどうでもいい。誰か。甘ったるいこの香りを、進み続ける針をどうにかして。  
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