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わからない
私は、十夢を見つめていた。
「わからない。でも、赤ちゃんが欲しいって」
「もし、赤ちゃんが出来たら、一人で育てられるの?」
「わからない」
「それだけじゃないよ!色んな事考えなきゃ!俺は、沢山の従業員がいるから知ってる。流産した人、子宮外妊娠した人、死産だった人、障害を持っている子供が産まれた人。健康で元気になんてうまくいかないんだよ!それでも、愛ちゃんは一人でそれを乗り越えられるの?」
こんなにも自分を思ってくれている男に出会ったのは初めてだと思った。
「わからない」
十夢は、私を引き寄せて抱き締めてくれる。
「愛ちゃん、あの人は無事に産まれたからわからないんだよ。愛ちゃんが、妊娠をしてこれからどんな道を進むかなんかあの人は全然わかっていない」
十夢の優しさが胸に染みていく。
「避妊しないのは、愛じゃないよ!責任は、お金でもない!愛してるなら、愛ちゃんの体の事を考えるはずだよ」
「十夢、私、妊娠するの怖い」
本音を初めて言えた。
「だったら、避妊しなきゃ」
「でも、純はしてくれない。生でするのが好きだから…。何度も、私にそうするのが好きだから…」
「ピル飲めるか調べに行く?俺が、産婦人科についていくから…。どうかな?もちろん、愛ちゃんの身体に負担がないか先生に聞いてからだよ」
十夢は、私の両頬を両手で軽く挟んだ。
「愛ちゃんの身体によくない事はしちゃ駄目だよ!だけど、避妊をあの人に任せてたら駄目だよ!あの人は、してくれるかわからないから…」
「わかった!ついてきて」
「うん、ついていくよ」
十夢は、そう言っておでこをコツンとぶつけてくれた。
「お酒飲もうか?」
「うん」
私は、十夢とお酒を飲む。
愛されてるって思ってた。
でも、十夢の話を聞いて違うと思った。
愛してくれてるって、十夢の事なんだ。
まだ、エッチさえしていないのに十夢は私の未来の身体まで心配してくれていた。
こんな人に、私は初めて出会った。
「どうした?」
「ううん」
十夢を好きになれたらいいのに…。
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