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静けさの中で
昔から図書館の静けさが好きだ。静かな図書館で本を読んでいるとなぜか、1人ではないような気がした。大勢の人に囲まれていても1人だと感じることがあるのに不思議だ。
そんな、図書館の中で私は恋をした。
彼と出会ったのは中学2年の6月ごろだ。彼とは図書館でしか会えない。話したこともないし、目があったこともない。
彼は私と同じ年齢くらいに見え、いつも学校の制服を着ていた。彼は茶髪で、なぜか、顔や手にけがをしていたり、制服が汚れていることもあった。
なので、いじめられているのではないか、と思った。もし、そうだとしたら心が痛む。でも、私は何もできない。
本を読んでいる時の彼の顔は、優しく、安心しているように見えた。その顔を見ていると私まで穏やかな気持ちになれた。
勇気を出して彼が座っている席の近くに座ったり、彼が読んでいた本を借りたりした。彼が読んでいる本は、本当に様々で好きな作家ばかりを読んでいるという感じでもなく、絵本や写真集も読んでいた。賞をとったりとか有名な作家であるとかには、あまり興味がないようだった。
彼は私の思いに気が付くはずもなく、突然、図書館に来なくなった。私が中学3年生になった時だ。
私は彼とまた会えることを信じて毎日のように図書館に通った。
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