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「おばちゃん、ありがとう!」
六歳の淳子は笑顔で受け取った小さなケースのガラスを嵌め込んだ蓋を開く。
白檀の香りが広がった。
「うわあ」
浅葱色の房飾りの付いた扇子を取り出した少女はそっと開く。
透かし彫りの扇子はテーブルの向こうに座る母親とその友人の笑顔を靄を掛けたように見せている。
「かぐや姫の扇子みたい」
「そう?」
艷やかな黒髪のパーマ頭に淑子おばさんは真っ赤なルージュを引いた唇で微笑む。
お母さんのお友達のこの人は普段は「ホンコン」という外国の街に住んでいて、テレビに出てくる女優さんのような素敵なお洋服とお化粧をして時々うちに遊びに来るのだ。
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