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小学校の裏山は子供たちの遊び場になっていた。
大型ゴミの集積所があって、一時期家庭の浴槽まで廃棄されていたことがあったらしい。
同級生たちは永島くんが溺死したものと決めつけて、廃棄された浴槽に入って戻ってくるという肝試しを行っていた。
今になって語るのは、表の記憶が薄れ裏側に封じていた記憶の箱が開いてしまったからなのだろうか。
「永島くん、ごめんね。ごめんね」
文子は奏太に何度も頭を下げた。
文子が奏太を永島くんと呼ぶとき、ときどき世界から音が消えて、あの夏の日のように静けさにとらわれる。
鼓膜は凍り付いて響かない。
キンと氷面を叩くような幻聴のあと、奏太の内側からじんわり浮かびあがる。
「オマエノカゾクモラウ」
その言葉を合図に闇に沈む。
浮上するといつも時間が飛んでいた。
日々、間隔が狭まっている。
だから文子のように封じることにした。
瞼を閉じ、あの日の記憶ごと自身も含めて。
裏側に──
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