高揚と落胆

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高揚と落胆

 それは9月のとある平日の夜のこと。いつものように仕事を終えて帰宅した田原智子(たはらともこ)が郵便ポストをチェックしたところ、チラシやDMに混じって角2封筒が1通投函されているのに気づいた。  智子は不思議に思って封筒を裏返したが、そこでどきりとして目を見開いた。そこに見覚えのある会社名が印字されていたからだ。 『文栄社(ぶんえいしゃ)』  智子はその会社名から目が離せなかった。文栄社。それは智子にとって重要な意味を持つ名前だった。なぜならそれは、智子が新人賞に作品を応募した出版社だったからだ。
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