思わぬ邂逅

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 葵はテーブルに視線を落として智子の話を聞いていた。てっきり智子の意見に同調し、単なる近況報告の一つとして受け止めてくれるものと思っていた。だが、返ってきたのは意外な反応だった。 「……あたしは読みたいけど、智子の本」  智子は目を瞬いて葵を見返した。葵は顔を上げて続けた。 「あたし、ずっと智子の作品読んできたけど、智子は絶対作家になれる才能あると思う。どの作品読んでも外れないし、売ってる本と同じくらい面白い。  でも、新人賞は倍率高くてほとんどの作品が通らないんでしょ? 小説投稿サイトで読んでくれる人もいるんだろうけど、サイト見る人は限られてるし、そもそも作品多すぎて埋もれるよね。読んだら絶対面白いってわかるのに、知られてないから読まれないのってすごく勿体ないと思うんだ。  でもさ、本になってお店に並ぶってことは、一般の人にも読んでもらえる可能性があるってことでしょ? そんなチャンス滅多にないし、乗ってみてもいいと思うんだけど」  智子はまじまじと葵を見つめた。葵の熱意に圧倒されたのではない。彼女が自分の作品を読んでくれているという事実に驚いたのだ。小説投稿サイトに登録したての頃にURLを送ったことはあったが、実際に読んだという話は聞いたことがなかった。智子自身、直接尋ねる勇気はなく、また催促しているようで抵抗があった。
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