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「……葵、あたしの作品読んでくれてたの? いつから?」
智子がおずおずと尋ねると、葵ははっとして口元を手で覆った。少しためらう様子を見せた後、やがて秘密を打ち明けるように小声で言った。
「……もう3年くらいかな。智子がサイト使い始めた時から、実はずっとフォローしてたんだ。
あたし、今まであんまり本読まなかったんだけど、智子の作品は本当に面白くて、気づいたら全部の作品読んでた。途中からは感想も書くようになったんだけど、あたしは智子みたいに語彙力ないから、いつも小学生みたいな感想しか書けなくて恥ずかしかったな」
葵が照れたように笑って頬を搔く。智子はまさかという思いで友人の顔を見返した。3年前からのフォロワーで、自分の作品を全て読んで感想をくれる人。思いつくのは一人しかいない。
「……もしかして、『板野青葉』って葵のこと!?」
智子が目を剥いて尋ねた。板野青葉は、智子が投稿した全ての作品に短い感想をくれるユーザーだ。葵は恥じらうように笑うと、こくりと頷いた。
智子はその事実が信じられなかった。小説投稿サイトの利用を始めて3年。思うような反応を得られず落ち込むこともあったが、それでも利用を続けてこられたのは、少数でも支持してくれる読者がいたからだ。だがまさか、その一人がリアルの友人だったとは――。
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