第二話

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第二話

 放課後。わたしが視聴覚室の入口をくぐると。 「あ、美音ちゃん」  中にいた女子生徒が、声をかけてくる。 「こんにちは、先輩がた」 「こんにちは」 「おつかれ〜」 「ひさしぶりやね」  最初に声をかけてくれた先輩以外も、思い思いの挨拶をしてくれた。  わたしはこの高校で、放送部に所属してる。  中学時代の放送部が、すごく楽しかったから。文化部が少ないから消去法で入っただけだったのに、のめり込んじゃったんだ。  高校での目標は、大会入賞! なんだけど。 「英単どうだった?」 「ギリセーフ」 「落ちた~木曜再テストだ〜やだよ~!」 「週一で英単語テストとか、この学校おかしいやろ」 「それな〜」  ここの放送部、すごくゆる〜いんだよね。 県内トップ6の名門進学校だからかな。勉強が大変なぶん、部活、とくに文化部は、ストレス発散の娯楽っていう要素が強いんだ。  放送部は、1年生の部員がわたしだけ。2・3年生を入れても10人に満たない。 集まってもなかなか練習を始めなくて、やっと発声練習にこぎつけても、終わったらおしゃべりか自習。  先輩達は優しいから、『美音ちゃん、中学の頃から放送やってたんでしょ。なら、キャリアでいえば私達のだれより先輩だよ~。やる気があるのはいいことだし、部活を改革したいならついて行くからね!』とか言ってくれるけど。自分のやりたいことに人を巻きこむのはしのびない。  わたしはいつも、自習している先輩達を眺めながら、部屋の隅っこで自主練してる。  ……でも、気まずいんだよね。1人だけ頑張るのって。 「そういえば、美音ちゃんは英単テスト受かった?」 「はい。今までいちども落ちてません」 「え、すご〜!」  ふふん。わたしは、この学校でもまあまあ優秀な部類なんだ。
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