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土曜日だけど、わたしは登校していた。
わたしの通う高校では、こういうことがよくある。進学校だから、土日に模試を受けたり、夏休み中に夏期講習とやらを受けたりしないといけないんだ。
ただし、今日はそういうのじゃない。秋の大会にそなえて、部活をするんだ。
放送の大会は、朗読部門とアナウンス部門に分かれてる。わたしが挑戦するのはアナウンス部門。自作の原稿を読みあげて、「伝える力」を競うの。
出場するには、学校の誰かに取材して、原稿を作ることから始めなきゃいけない。だから、大会のずっと前から練習以外の『準備』が必要なんだ。
文章はだいたいできた。今日は、それを顧問に添削してもらうつもり。
バスに乗ると、5日連続でもはや慣れてしまった気配。
運転席が見える位置に陣取る。運転席には、不本意ながら見慣れてしまった顔。
ホント、偶然ってすごいね。思わず半眼になる。
「あのう」
すぐそこで声がして、見れば、高齢の女性が車外から運転席の方をのぞきこんでいた。
「このバスは、土津に停まるんですかねえ」
林田という運転手は
「……」
いつものごとくガン無視。時が止まったように前方へ顔を向けて、微動だにしない。
「ええっと……」
困っている女性を見かねて
「このバスは若葉車庫行きなので、土津方面には行きませんね。15番か61番に乗れば確実だと思いますよ」
助け舟を出す。
女性は、はっとわたしに目を向け、
「そうですか。ありがとうねえ、おじょうさん」
ほほえんで、ていねいにお礼を言ってくれる。
久々に、なんだかいい気分になった。なのに。
女性が車体から距離を置いた瞬間にドアが閉まる。わたしを乗せたバスはそのまま即、移動開始。
水を差された気分で、イラッとしてしまった。
若葉車庫に着いても、わたしはバスを降りなかった。
「あの」
運転席をのぞきこむ。
「客を無視するのはよくないですよ」
林田っていう運転手は、無反応。ちらりと迷惑そうにわたしを見ただけだった。
ひっど! 迷惑してるのはこっちだっていうの!
もう、あったまにきた! こうなったら……
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