第三話

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 わたしは学校の前に車庫の内にある営業所へ足を伸ばした。  受付の女の人が 「ご用件をおうかがいします」  礼儀正しく出迎えてくれる。けど、 「運転手の、林田さんのことですが」  切り出すと、途端に硬い表情になった。 「申し訳ありません、責任者を呼んでまいりましょう。その者が対応いたします」  厄介ごとの気配を察知して、お偉いさんに押しつけることに決めたらしい。逃げるように引っこんでいった。 代わりに出てきたのは、いかつい男性。 「あのっ。林田っていう名前の運転手さんが、」 「君は、大蔵高校の生徒か」  改めて事情を説明しようとしたら、顔をしかめてさえぎってきた。 「こちらにも事情がある。そもそも、学生の本分は勉強だろう。くだらないことをやっていないで、さっさと学校に行きなさい」  かっと頭に血が上る。  くだらないってなによ!?   クレーマーだから、話を聞く価値もないと判断されたんだろう。気持ちはわかるけど、子供扱いで軽くあしらわれたのが嫌でたまらない。  何か言い返そうとしながらも、ふさわしい言葉を思いつく前に 「あまり大人の仕事を邪魔するなら、学校に連絡するよ」  脅しじみたことを言われ、引き下がるしかなかった。  わたしは気づかなかった。休憩中の運転手が1人、面白そうに一連のやり取りを聞いていたのを。 「ふ〜ん。あいつの容姿に惑わされない子、か。いいんじゃないの?」  彼は笑って、飲み終わった野菜ジュースの紙パックを握りつぶす。  もたれかかっていた壁から背を離して、紙パックをゴミ箱に捨てに行った。 「さ〜てと! 点検点検」
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