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私ははやてが走っていった道路を見ながら、そう言った。
言葉自体はそうでもないが、私の声色はどうも嫌味っぽい。
ヒーローはフッと笑う。
「彼はその段階じゃないよ。体力作りに専念した方が良い」
そう、さらっと毒を吐いた――ように私には見えた。
「――つまり、はやてには才能がないってことですか?」
私が眉間に皺を寄せて言うと、ヒーローは「随分、話が飛躍したねぇ」と笑う。
「彼、才能はあるよ。努力は才能だ」
「はあ……」
「その才能を邪魔しちゃいけない」
ヒーローの言葉が私にはふわふわして聞こえる。
確かに努力は才能だと思うこともあるけど、その努力が空回りという結果で終わることもある。
世の中は、何だかんだで結果で評価される。
はやての努力が空回りしてしまったら、その努力は才能といえるのだろうか。
「君、足元を見過ぎだよ」
その言葉に、私の肩は大きく跳ねた。
顔を上げる。いつの間にか、私は俯いていたらしい。
ヒーローの顔をゆっくりと見る。
「どうしたんだい? 悩みがあるなら聞くよ」
ヒーローは大きく口を開けて笑っていた。
その様子は明るく、さっきと変化がない。
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