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私の表情は強張る。あの言葉はそのままの意味で言ったんだと自分を納得させた。
「特に、ないです」
私は小さく口角を上げる。
「あまり話し過ぎるのも迷惑でしょ? もう帰ります」
ヒーローに「お仕事、頑張ってください」と声を掛けて去っていった。
なんだかモヤモヤする。
あのヒーローと会ってから調子が悪い気がする。
私は今、授業中なのに、屋上にいる。
寝転がって空を眺めていた。
本当は屋上なんて立ち入り禁止だ。
けれど、鍵が壊れてて行こうと思えば誰でも行けるようになっている。
受験や学校、友達と過ごす日常、たまに全部投げ捨てたくなる。
「かえで?」
ふと上から声が降ってきた。
はやてが私の見る青空を遮った。
「授業サボっちゃダメだよ。なごみが心配してたよ」
彼もへらっと笑っているが、私の記憶が正しければ授業終了のチャイムはまだ鳴ってないはずだ。
「はやてこそサボってない?」
私が身体を起こして言うと、はやては誤魔化すように笑って「うん」と頷いた。
私ははやてに冷ややかな視線を送った。
「――かえでは今、悩みでもあるの?」
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