1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
私は少し迷ったけれど、はやてに更に近づいた。
「だったら、諦めても誰も責めないよ」
はやての顔を覗き込む。
はやては小さく息を吸って、私の目を見た。
「いや、違うんだ。なりたい気持ちとなりたくない気持ちが両方、僕の中にあるんだよ」
はやては小さく笑う。その表情は何処か苦く見えた。
「それで、二つを天秤にかけたら」
「――なりたいって気持ちの方が重かったんだね」
私がそう言うと、はやてはゆっくりと頷く。
はやてのその姿に私は寂しさを感じた。
「そっか、ありがと」
その寂しさを誤魔化すように笑ってお礼を言う。
きっとはやてが質問に答えてくれたのは私を大切に思ってくれたからだと思う。
でも、質問に答えたはやては私にとって少し遠くなった気がした。
はやてはなんだか泣きそうな顔をする。
「なんか格好悪いよね」
「ううん、格好良いよ」
はやてのぼやきに私はそう切り返す。
すると、はやてが露骨に嫌そうな顔をしてきた。
「――何処が?」
そのはやての質問に即答出来れば格好良いんだけど、聞かれると言葉に困る。上手く説明出来ない。
「私が格好良いと思ったから、格好良いの」
最初のコメントを投稿しよう!