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「誰かが誰かを救える数なんて高が知れてる」
それに、あの男子生徒の心まで救えてはいないと思う。
「その誰かが増えれば、その高もどんどん大きくなっていくよね」
「そうなったら、ヒーローなんて職業は意味ないじゃない」
「そうだね。だったら、かえでは平凡になっちゃうね」
――なんだろう。はやてと話してて、頭がこんがらがってきた。
はやては優しく笑っている。
「だから、なろうよ」
そう言って、私に青紙を再び差し出した。
なりたくない。そんな言葉が頭に浮かぶが、声にはならない。
「――また紙飛行機にして飛ばすかもよ?」
私の精一杯の抵抗に、はやては「そのときはそのときで考える」と笑った。
結局、青紙は私の手元に戻ってきた。
はやてが去ったあと、その青紙をクシャクシャにして捨てることも、また紙飛行機にして屋上へ行くことも私には出来なかった。
涙が自然と溢れ出る。
なりたくないって気持ちは本物だ。
だけど、同時に私の中に誰かを助けたいという気持ちがあるのも事実だ。
最低限、目の前にいる人間を見捨てたくはない。
簡単に人を助けられないけれど、その努力を諦めたくない。
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