ヒーローへの片道切符

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「いやー、今日この町に配属になったヒーローでね、早朝パトロール中なんだ」  彼は笑いながら聞いてもない話を始める。 「そんなときに君を見つけてね、嬉しくなって声を掛けちゃった」 「――ただのゴミ拾いですよ。そこまで言うことじゃないと思います」  私は露骨に迷惑そうな顔をしていたと思う。 「いやいや、謙虚さも過ぎると嫌味だよ」  だけど、通じてないようだ。どっちが嫌味なんだか。 「これから学校に行かないといけないんで」  私はマンションの前でヒーローに言う。苛立った感情は隠した。 「早朝パトロール頑張ってください」  少し笑ってヒーローに言うと、私はマンションの中へ入っていった。  学校では、いつも通りの日常を送っている。  私は変わらないし、同級生も変わっていない。  高校受験で皆、気が立っている。三年生になってからずっと、ピリピリとした空気を教室が包んでいた。
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