ヒーローへの片道切符

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 そうやって生きるって私は決めた。  大いなる力には大いなる責任が伴う、だっけ? そんなもの、私は知らない。  放課後、はやてがいつものようにマンションの近くで走り込みをしている。  彼は某偏差値がバカ高い私立校に一般入試で受けるらしい。そのための体力作りをやっていると言っていた。試験の他に体力テストもあるらしい。  私はそれを横目に家へ帰っていく。  はやてには悪いけど、何故そこまでやるのかわからない。多分、はやてがあの私立校に受かることは無理だと思う。  確かに、はやては私より頭が良いけど、なんか受かって欲しくない。  それに、大体あの私立校の卒業生に職業がヒーローの人間が多いってだけで、ヒーロー育成なんて表立ってしてないのに。  はやてがあの私立校に何を夢見てるのかわからない。  大体、はやての夢なんて何なのだろう。ヒーローになって何をするって言うのだろう。  走り込みをしているはやてを見ると、私はいつも沸々と苛立ってしまう。  その苛立ちは自己嫌悪ですぐに消えるけど、なんだか後味の悪さが残る。  私ははやてに嫉妬してるのかな……。  ヒーロー云々じゃなくて、夢を持ってるはやてに対して。  夢って、一体どうやって見るんだろう。  皆、足元見ないのかな。自分の足元も、なりたいものの足元も。 「君、また会ったね」  急に声を掛けられて振り返る。  そこには今朝会ったヒーローが立っていた。大きく口を開けて笑っている。
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