32人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇
ツェグは、自分のゲルで恋女房から手当てを受けていた。
二つ下の妻は、夫が帰ってきて嬉しいやら怒っていいのか困惑していた。
夫以外皆、戦死したのである。
「あんたが帰ってきたのは、嬉しいけど、ここももうじき攻められるんでしょう?」
ササリが眉を八の字にして、赤子を抱き締めた。
「大丈夫だ。俺に考えがある。」
「考え?」
ツェグが口を開こうとした時に、赤子がぐずりだして泣き出してしまった。
ドゥルジは天才的な武術の腕があるとはいえ、まだ13歳な上に向こうは兵力がたくさんある。少人数では勝てるわけがない。
大巫女は、予知の目はないという。あのユルもその目を受けとれなかったとか。
ならば、この村は敵の手に渡るだろう。
長の家にある、宝玉を差し出せば俺達だけでも助かるかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!