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バドゥとアルスランは、敵方が半数程村の方へ行くのを見て、馬首をそちらに向け駆けた。
馬を走らせながら、弓を引いた。
矢は馬の尻に突き刺さるや否や、暴れ狂うように横へと駆けた。
「なんだぁ?」
男達が振り返って、二人の少年を見た。
バドゥとアルスランは好機とばかりに、再度弓を射た。
今度は、男の首もとを矢が貫いた。
「この餓鬼っ」
総毛立つ男達に、イモレとトナイが笑いながら馬首を少年達の方に向けた。
「あんな糞餓鬼共、俺たち二人で十分だ。タムは頭領の言う通りに村へ。」
「分かった。」
タムは頷くと、36人を連れて駆けて行ってしまった。
2人は、矢が届かない距離で少年をつぶさに眺めた。
「そこの目付きの悪いやつ、お前父親似か?」
イモレがにやつきながら、バドゥにそう問うた。
「そうだが、それがなんだ?」
「隣の猫毛の奴の髪も見覚えがあるぜぇ~。女の武人だったからなぁ~。胴体半分になったからよぅ。上の口と下の口で楽しんだぜぇ~」
と、下卑た笑いを漏らした。
アルスランはその意味することを知って、怒りに顔が熱くなった。
「なっ!?」
「お前の父親はなぁ、20人で槍をぶっ刺して殺したぜぇ。」
バドゥは、怒り狂うアルスランを押さえて、口の端を吊り上げた。
「そうか。親父殿は20人ががりではないと、仕留めれなかったか。」
アルスランに、落ち着けと肩を叩いた。
イモレの顔が屈辱に歪んだ。
挑発に乗るだろうと思っていたが、逆にお前一人では討てなかったんだな、と嘲られたのだ。
「アルスラン、互いに親の仇が討てるんだから、僥倖だよな。」
その言葉でアルスランは、冷静さを取り戻したようだ。
「それもそうだな。」
「糞餓鬼共一体何を言って!」
バドゥとアルスランが再び弓を構えて、矢を弾いた。
「ハハッ、そんな所から撃って届くわけが」
ザシュッッ
最後まで言い終わる前にイモレとトナイの首に矢が突き刺さった。
どさり、と音がして馬上から落ちた。
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