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ツェグは、小走りにタムへと近づき、袋を手渡した。
タムは、ずっしりとしたその袋を受け取り、袋の口を開けた。
「雷が入った水晶で、とても珍しくて綺麗なお宝なんだ。」
とツェグは上気した顔で言った。
こんな珍しいお宝なんだ。こいつらも気に入って、俺をきっと仲間にしてくれるに違いない。
タムが袋に手をつっこんで、出てきたのは丸い石だった。
ただの、灰色の丸い石。
「…は?」
ツェグは、目の前の光景が理解できなかった。
「これが、お宝、ねぇ?」
タムの目が怒りで細められる。
「そ、それは、何かの手違い、で。」
ツェグは、何かに思い至ったように、振り替えってユルを見た。
ゴツッンと、鈍い音が聞こえた。
「いらねぇから、返す。」
タムのその言葉で、石が自分の脳天を直撃したのだと悟り、そして視界が真っ黒になった。
「あんたっっ!!」
ササリが、頭から血を吹き出して倒れる夫を見て悲鳴を上げた。
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