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「天に祈るだけでは、救われませんよ。」
ユルはそう冷たく言い放つと、弦を極限まで引き絞り、矢を射た。
「んな所から届くわけが」
はっ、とタムは笑った直後、隣の馬上にいた奴の首もとに矢が刺さり後方へとふっ飛んだ。
「なにっ!?」
「僕の父様は、弓の腕が良い武人でして。」
「あの赤毛、見たことがあるぞ。なあお前の父親の最期を教えてやろうか?」
ニタニタとしながら、男が言った。
ふわり、とユルの頬を風が撫でた。
ユルは、後方に手で合図をした。
「はぁ。観たので知っています。」
と、一斎に矢が放たれた。
矢は追い風を受け、加速し馬上の上へと降り注いだ。
ザシュッ、
ブシュッ、
「ぎゃああっ」
矢があちらこちらに刺さり、馬が慌てふためき、地面の穴に足をとられ、転げ、ズチャリと地面に叩きつけられ、人であったものを馬が踏んでいく阿鼻叫喚である。
女達は、手を止めることなく矢をつがえた。
矢が尽きる頃には、血溜まりの中に、男が二人立っていた。
「二人も残ってしまいましたか。」
と、呟くようにユルは言った。
タルとデイは、人を盾にして難を逃れたようだ。
「ターニャ、矢は?」
「全部使ったわ。」
「では、後方へ下がっていてください。」
「剣も使えるわよ?」
ターニャは、足手まといだと判断されたと思って憤慨した。
「いいから、後ろへ!」
と、凄い剣幕で言われ、ターニャは渋々後方へと下がった。
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