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地平線から、太陽が産まれて辺りはオレンジ色に染まった。
神々しいまでの日の出が、その朝焼け色がなんだか禍々しいものに感じた。
「はっ、」
少年は、再び胸に手を当てて笑った。
「ははっ」
目には涙が一雫こぼれたが、笑いは止まらなかった。
「ははははっははははははっ」
腹を抱えるようにして笑った時に、杖が手から離れて下へと落ちた。
カツーンと言う音に、少年は笑うのをピタリと止め無機質な目で岩場の下を見下ろした。
本来ならば、先祖代々受け継がれた杖を取りに下へと降りるべきであろう。
だが、少年は下へと降りず元来た道へと降りた。
杖を取りに行く気はさらさらないのだ。
杖がないためか、行きに登った時よりも慎重に降りた為か、行きよりも倍の時間がかかった。
太陽はすでに中天にさしかかっている。
岩山を降りきり、草の上に杖が落ちているのを見て、少年は嘆息した。
「…なんだ、棄てられないのか。」
ポツリと呟くと杖を持ちあげた。
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