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「それでお前は自分だけ逃げ帰って来たのか。」
ヒヤリとする言葉に、二十も下の子供に震いあがった。
「お、俺は女房や子供が気になって」
ドゥルジは、じろりと戦士を見上げた。
ドゥルジが口を開く前に、間延びした声が聞こえてきた。
「そのお陰で、一早く情報が知れたからいいじゃないですか。」
村の入り口にこしらえた二つの木の柱の間から、杖を持った少年が現れた。
「ユル。」
ドゥルジが少年の名前を呼んだ。
ユルが杖をつく度に、杖につけられた鈴と木札が音を鳴らした。
「ツェクおじさん、ここからその川までどれくらいかかりますか?」
ユルは戦士、ツェクの顔を覗きこむように聞いた。
ツェクは、思わず怯んだ。
「馬で一時間くらいだ。」
「へぇ。」
と、考えこむようにユルは拳を口に当てた。
「…何を考えている?ユル?」
ユルは、ぱっとドゥルジを見て
「次の長はドゥルジ様だ。」
声高く言い放った。
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