一章 暴れ龍兄弟爆誕

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「そうだ、まだ若様がいるじゃないか。」 「ドゥルジ様なら」 「シャーマンがそう言うなら…」 と、さざ波のように声が聞こえてくる。 アヤンガはユルを見た。 (こいつ、大きな声で言ったのはわざとか。) ドゥルジもじっとユルを見た。 シャンッッとユルは杖を、ドゥルジの後方へと向けた。 「ドゥルジ様、大シャーマンに会いに行って託宣を受けとるといいよ。」 ドゥルジは、自分の背後を振り返った。 門から真っ直ぐ行くと、自分の長のゲルがあり、その後方に丘がある。その上にひっそりと佇むように白い幕屋がある。 「その必要はない。」 しわがれた声が人垣の後方から聞こえた。 人々は驚いたように、道の真ん中を開けた。 そこには、普段は丘の上で祈りを捧げている老婆の大シャーマンと、大シャーマンが歩くのを手助けるように6歳と5歳のシャーマンが両脇にいる。 人々の間を、真っ白い長い髪に青い瞳。白いその面には深いシワが刻まれている。白い衣を着て鈴がたくさん連なる杖を持っている。 「オババ様。」 ドゥルジは拳を作りそれを交差させて、胸に当て一礼した。 オババは、ドゥルジの前に立つと杖を持ちあげた。 「長のダルハが御霊となって鳥となり飛び立つのが視えた。」 オババの言葉に、辺りがざわついた。 ツェクが言った事は本当だったのかと、皆が青覚めた。 「オババ様、う、うちの人は???」 「うちの子は?」 「無事なんですか???」 死という言葉を出すのが恐ろしくて、女 達はそう聞いた。 オババは息を一つ吐くと、首を緩やかに横に振った。 「そんなっっ!??」 女達は、泣き崩れた。 「嘆き悲しむのは、後だ。今からこの村を奪いに来るだろうさ。」 ひぃっと悲鳴のような声があがるが、大巫女が杖を地面に叩くと鈴の音がシャランッと鳴った。 辺りが、さざ波を引くように静まり返った。 「ドゥルジ様には、次の長になっていただき、戦ってもらいたい。」 ドゥルジは、唇を引き結ぶと頷いた。 オババは、さらにドゥルジに近寄ると杖を天高く持ちあげた。 「ローは、大いなる龍の加護がある。その龍の加護を受け継ぐのは、雷鳴轟く日に産まれたドゥルジだ!」 そして声高に宣言した。 80名の村人は、ドゥルジに跪いた。 ここに若き長が誕生した。
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