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慶吾はやっぱり照れてるみたいで、僕の方を向かずに言った。
「そう?ありがとう。でもさ、やっぱり女の子と制服が違うってのがね……わかってるんだけど、この感覚は慣れられないなぁ」
中学に入った時も同じ様な気持ちになった事を思い出す。
「今までそれを誰にも言わず過ごしてきたんだよな。強いな、春希は」
すごく優しい顔で呟く。
「強くなんかないよ」
「これからは言い難い事じゃなければ俺にも言ってくれたらいいからな。上手く相談に乗れるかわからんけど、話すだけで気が楽になるって事もあるだろ」
感じている事を話す相手がいるだけでこんなに気持ちが違うなんて改めて慶吾の存在が大きい物と気付く。
「ありがとう……慶吾」
「うん」
「ねぇ、手繋ぎたい」
「俺もそうしたいけど、もう少し我慢な」
僕の見た目が女の子だったら我慢せずに手を繋げるんだけどな…と、この歯痒さが新鮮な喜びに感じる。
他のカップルは感じる事の出来ない障害ですら妙に楽しめてしまう、すごくポジティブな思考になっている。
慶吾の存在ってすごい。僕をこんなに変えてくれるなんて。想いを伝え合ったのはついこの前なのに。
駅を出て少し歩いた所にあるファーストフードでお昼ご飯をテイクアウトして慶吾の家に向かった。
入学式だったからお母さんが家で待ってるだろうから今日は長居は出来ないのが残念だな。
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