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今、僕は川田さんに告白をされている。冷静にならないといけないんだけど、なんて答えればいいかわからないでいる。
何か言わなきゃ。
「あの……ありがとう。とにかく驚いてる……好きになってもらえるって、すごくありがたい事だと思うよ」
「うん」
川田さんは明るい顔でこちらを向いた。
だけど、恋愛対象になるかというとやはりよくわからない。ここで変に期待はさせてはいけない。
だとしてもここで僕はトランスジェンダーかもしれない、心は女かもしれないなんて言うのか?
変な言い訳と思われて傷付けるだけだろう。
どうしよう……
川田さんが口を開く。
「いきなりだし、驚くよね。ごめんね。友達としてでいいから、仲良くして欲しいな」
「え……でも」
「大丈夫、好きって言った事は一旦忘れよう。これから仲良くなって、もう一度チャンスちょうだいよ。もしかしたら木村君から好きって言ってくれるかもしれないでしょ?」
川田さんはすごく大人だ。僕に気遣ってくれてるんだ。きっと優しい人なんだろう。
「ありがとう。友達って事なら僕もとても嬉しいよ」
「友達って事なら……か」
川田さんは少し寂しそうにしていた。
「よろしくね木村君」
「こちらこそ。川田さん」
「よそよそしいなぁ。麻美ちゃんとかにしない?」
「そ、そうだね。よろしく麻美ちゃん」
ごめんね川田さん。
騙しているわけじゃないんだけど、嘘を付いた様な気分になってしまっていた。
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