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もう一度、親友になりたい
ヒロトとマサヤに支えられて帰ってきたヨシキは土気色の能面のような顔をしていた。
処置室で点滴を落としながら、僕はヨシキに伝えた。
「ヨシキ。僕もさ。何もかも捨てて消えちまいたいと、何度思ったか知れない。ヒロトやマサヤも、リュウジだって、きっと同じ気持ちになったことある。その気持ち、みんな、互いに察してたのに。ヨシキが三途の川を渡る寸前まで行く前に、僕らに、おまえの手を握って離さないくらいの素っ裸の愛があったなら、ヨシキに、こんな命がけの禊ぎをさせなくて済んだ。今回は、僕ら全員が己の良心に裁かれた。誰もが、心臓を抉り出されて、この心臓を、命を、自分一人の力だけでは動かし続けていけないことに気づかされた。そうだろう? みんな。ヨシキ、勇気をだして、力一杯の優しさで、帰ってきてくれて、本当にありがとう。だから、お願いだ。ヨシキ。もう一度、僕の親友になってくれ。僕らは、もう一度、ヨシキの親友になりたい! 今度こそ、腹の底から支え合える、ヨシキの親友になりたいんだ!」
ヨシキの手の上に、誰からともなく、働く男たちの分厚い手のひらが重ねられた。
ヨシキは、安心したかのように、ほんのり頬に赤味を取り戻した。
ヨシキの閉じられた瞼から、一筋、光るものが落ちた。
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