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小学校高学年の時、たまたま知ってしまった両親の仲。
後にそれは“仮面夫婦”と呼ばれる物だと知った。
当時は怖くて・・・。
とても、怖くて・・・。
お父さんとお母さんのこの笑顔の裏に、見た目とは違う顔があるのが怖くて。
だから、集中して見てしまった・・・。
お父さんとお母さんから、自分は愛されているのか・・・。
本当に、愛して貰っているのか・・・。
そしたら、見抜けるようになってしまった。
いつからか、見抜けるようになった。
集中して見たら、その人の表の顔・・・その裏に隠している顔が見抜けるようになった。
結果的に、両親は離婚してしまったけれど、今でも私のことを愛してくれている。
でも、両親以外の顔でも見抜けるようになった私のこの目・・・。
“本物”の情報が必要にもなるこの仕事で、私の目を生かすことが出来ていた。
そんな私の目で、弟二君の顔を見る。
この顔の裏にある顔を・・・見抜く・・・。
そんな時、一瞬・・・
一瞬だけ・・・
私自身の全神経が目にだけ集中し・・・
音が消滅する・・・。
そして、音が戻り・・・
私は笑った・・・。
こんなの、笑うしかないから笑った・・・。
弟二君の顔、その顔は表も裏も私のことが大好きな顔をしていたから・・・。
でも、私は・・・
「その映画、もう観たくないから行かない。」
私の返事に弟二君が驚いた顔をした。
表の顔だけではなく、裏の顔も一緒だった。
「じゃあ、カニ食べ放題行こうか!
カニ、凄い好きなんだよね?」
この前2人で遊びに行った時、私はそんな話をしていた。
確かに、していた。
でも・・・
「今はカニの気分でもないから行かない。」
そう断って、私は歩き始める。
そんな私に弟二君がついてきて・・・
「・・・また、デートしようよ。
俺と、デートしようよ。」
そう言ってくるので、歩きながら笑った。
「あれ、デートだったの?
言われてないから知らなかった!」
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