目を閉じて。そして、目は開けて。

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そう言ったけれど、知っていた。 私はあれがデートだとちゃんと知っていた。 だって、見抜けるから・・・。 私を誘ってきた弟二君の顔は、表も裏も恋の顔をしていたから。 たまに、弟二君は私の前になると恋の顔をしていた。 そして今も・・・今も、している。 今もしてくれている・・・。 なのに・・・ なのに・・・ この前のデートの時、その時にはそんな顔はなくて・・・。 優しい笑顔の裏、楽しんでいる笑顔の裏、恋をしている笑顔の裏・・・ その裏は、恋の“こ”の字もない顔をしていた。 見抜いてしまった・・・。 私と2人きりでのデートで、裏の顔はそんな顔をしていると見抜いてしまった・・・。 「あれ・・・デートのつもりで!! 俺はちゃんと、デートのつもりでさ!! もう1回チャレンジさせてくれないかな? あともう1回でいいから!!」 弟二君とは、情報が多く必要なプロジェクトの時はいつも一緒になっていた。 常駐先の企業で一緒になっていたり、調査会社側のサポートとして私も対象者に一緒に会いに行ったりもしていた。 たまに見せる弟二君の顔。 表でも裏でも私に恋の顔をしている時・・・。 そんな顔を見て・・・そんな顔を見て、私は弟二君に恋をした。 だって、その時の顔はあまりにも裏表のない顔で・・・。 私の顔をそんな顔で見る人は、今までいなくて・・・。 両親でさえ、もっと他の顔が混じったような“愛している”だった・・・。
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