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「デートなら行かないかな。
他の人も何人か誘おうか?
普通に、普通にみんなで食べに行こう。」
「そうじゃなくて・・・。
俺は日下部さんと・・・まりあちゃんと食べに行きたいんだけど・・・。
デートでさ、食べに行きたいんだけど・・・。」
「・・・デートだとは知らなかったけど、“まりあちゃん”って呼んできた時に“やめて”って言ったよね?
その時、“やめて”って言ったよね?」
「そうだけど・・・。
でも、俺も・・・」
弟二君が言葉を切り、立ち止まった。
それに思わず私も立ち止まってしまって・・・。
見てしまった・・・。
思わず、見てしまった・・・。
癖になっているし、当たり前のように集中して・・・
弟二君の顔を見てしまった・・・。
一瞬、全ての音が遮断される・・・。
全ての音が遮断される・・・。
なのに・・・
それなのに・・・
私の心は・・・
胸は・・・
キュ────ッ...と、音を立てた・・・。
そんな音だけが・・・
そんな、恋の音だけが響いて・・・
私は、笑った・・・。
表も裏も絶望しかないような顔でいる弟二君の顔に、笑った・・・。
そして、笑いながら言ってみた。
ずっと前から何度も何度も思っていたことを。
でも、言えずにいたことを言ってみた。
もう・・・すっかり限界を通りすぎたのでヤケクソで言ってみた。
「弟二君って、顔を沢山持ちすぎだよね。
今、私の目の前にいる弟二君が1番自然な弟二君の顔なのは分かるけど。
それに、この弟二君が色んな顔になっても、“あの弟二君の別の顔だな”って分かるけど。」
そう言ってから、真剣な顔で私を見詰めている弟二君に続ける。
続きを待っている顔をしているので、続ける。
「“弟二君”の他に、メインの顔となる顔がもう2つある。
弟二君と・・・更にもう2つ分のメインとなる顔を持っていて、合計3つの顔が色んな顔になるから顔を沢山持ちすぎてるよね。」
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