目を閉じて。そして、目は開けて。

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そう怒った私に弟二君が小さくなる。 筋肉質で大きな身体、それを小さくする。 そして、泣きそうな顔になった・・・。 そしたら・・・ 裏の顔は泣いていた・・・。 確かに、泣いていた・・・。 その顔を見て、私は笑う・・・。 「2人きりの時は、お互いに裏表のない顔でいよう。 それで、ちゃんと喋ろう。 この胸の中の音をちゃんと言葉に出そう。」 私は両手で胸の真ん中をおさえる。 そしたら、弟二君が“嬉しい”しかない顔で近付いてきて・・・ 「まりあちゃんの胸の中の音、何て言ってる・・・?」 そう聞いてきて・・・ 私は・・・目を、閉じた・・・。 そして、集中する・・・。 真っ黒の中、集中する・・・。 音を消す・・・。 胸の中の音を聞く為に、音を消す・・・。 そしたら、聞こえた・・・。 聞こえた・・・。 ちゃんと、聞こえた・・・。 そして、その音を聞き目を開ける・・・。 ゆっくりと、目を開ける・・・。 それから伝えた・・・。 「“弟二君の顔だけ”が大好きっていう音が聞こえたよ。」 この会社の女の子達が大好きな弟二君の顔。 でも、私のこれはそういう音ではない。 3つのメインとなる顔の中、そんな中、“弟二君の顔だけ”が大好きという音・・・。 そんな音を響かせていた・・・。 ちゃんと、響かせていた・・・。 “深く愛している”の顔で私を見下ろす弟二君に、これからも胸の中の音を伝えていく・・・。 どんなに集中して顔を見ても、どんな顔も見抜ける目を持っていたとしても、この胸の中全てを見抜くことは出来ないはずだから・・・。 だから、目を閉じて・・・ 集中をして音を消す・・・。 そして、この胸に両手を当て・・・ 聞いていく・・・。 弟二君への“愛の音”を聞いていく・・・。 目を閉じて、聞いていく・・・。 そして、目を開けて言葉にして伝えていく・・・。 「俺の胸の中の音は・・・」 弟二君の口から出てきた“愛の音”にも、目をちゃんと開けて聞く・・・。 目を開けて、集中して、聞く・・・。 やっぱり弟二君の顔を見て聞きたいと思うから・・・。 end.....
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