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俺が近くにいたら教えてやれるのにな。
でも俺たちの実家は県をまたいでいる。
もっと近くなら良かったのに……。
「お兄ちゃん? 今、笑美里の悪口言った?」
「げ。……お前聞いていたのか?」
幸太郎の顔に『ヤバい』って書いてる。
「ふーんだ! どうせ笑美里は頭悪いもん」
「……はぁ……。お前はそそっかしいんだ。計算ミスが多すぎる。考え方はあっているのに勿体ないことばかりしている」
「わかってるもーん! でも気をつけてるんだよ?」
「……笑美里も塾に行ってるのか?」
「行ってない。家庭教師の先生に見てもらっているの」
「家庭教師?」
「塾って、中学受験の塾が多いだろう?
うちの学校には合わないんだよ。笑美里もそのまま聖堂館の中学に上がるからな。
だから家庭教師に学校の授業を先進みして見てもらっている」
なるほど……。
「笑美里、頑張れよ! いつかお互い医者として一緒に仕事が出来たらいいな」
「宗司くんと? ……うん、笑美里頑張る!」
笑美里がニコリと微笑んだ。
それが子供時代に会った最後の日だった。
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