夜のドライブ

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夜のドライブ

 心臓に極太の毛が生えている同じ職場の女友達〈さとちゃん〉が、毎週金曜日仕事が終わってから【2人で夜のドライブ】と言う名前の運転の練習に付き合ってくれた。  さとちゃんと私は、偶然にも同じ市内に住んでいた。  2人共仕事が終わって一旦家に帰って各々夜ご飯を食べて、スマホのアプリで連絡のやり取りをして、私が彼女の家に迎えに行き【2人で夜のドライブ】に行く。    行き先はいつも京都府・奈良県・大阪府の3府県が接する市・町の夜景が見える京都府の南の方にある山の上の展望台。  展望台に繋がっている山道は、車2台すれ違うことが出来ないくらい細く、道の途中にすれ違える待機場所みたいなところが数ヵ所あるけど、今の運転技術では不安で、行く度に(どうか他の車とすれ違いません様に!!もしもの時は、青ちゃん頼むで!)と、祈り、お願いしながら運転をする。  毎回車内や展望台にある夜景がよく見える場所にあるベンチに座っての会話は、もっぱらさとちゃんの片想いの人の話で盛上がる。片想いの人が社内の人で、『今日話せた!』『自販機でカフェオレ奢ってもらった!』『食堂行く時たまたま一緒になってそのまま御一緒出来た!』など、毎回お腹いっぱいになってしまう!  でも、最近さとちゃんの片想いに進展があって、遂に両想いに…それからは【2人で夜のドライブ】から【1人で夜のドライブ】になってしまった。  さとちゃんの恋の事を喜ぶ一方で寂しくもあり、何とも言えない複雑な心境で週1回からほぼ週3回、FM89.4を聴きながらいつもの展望台に向かう。  山道を運転している時も相変わらず(どうか他の車とすれ違いません様に!!もしもの時は、青ちゃん頼むで!)と、祈り、お願いしながら運転する。
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