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約束~きっかけは日本酒から
展望台入口付近にある駐車場に入る1台の車のヘッドライトが眩しく、はっとした遠藤さんがちらっと腕時計を見た。
『ボクがここに着いたのが確か19時位やから…今20時前か。』
「えっ!もう、20時ですか!早っ!そんな時間経ってるとは…私が着いたん確か18時半前やし。」
『ホンマに、びっくりしますね。1時間程喋ってる感じしませんでしたね。20分位かなぁって。』
ふと、ある重大なことに気がついてしまった。
「あっ…。近っ…。」
思わず呟いてしまった。
『あっ!ほんまや!申し訳ない!隣座る時に端に座るって話やったのに!』
私は慌てて言った。
「いえ。私もあの時端に座り直したのに話に夢中になってしもて…。きっと、離れてたら話辛くって、知らん間に近寄ったんですわ。」
『多分、ボクも。離れてたら話辛くって知らん間に近寄ってしまったんや。』
「まぁそんなけ話が盛上がったって言うことで!」
『じゃ、そう言うことで!ありがとう。ところで明日って仕事ですよね?今日水曜日で週のど真ん中やし。』
「もちろん、明日仕事です。毎週水曜日はノー残業デーでここに早いこと来れたんですヨ。」
『へー。同じです。ボクとこも毎週水曜日はノー残業デーです。』
「明日もお互い仕事やし、ぼちぼち帰りましょうか。」
『あーーー…そうです…ね…。』
遠藤さんは少し苦笑いをして、なぜか少し思案中。
『ーーあの、会社の最寄駅って、○○○ですか?』
「はい。そうです。」
再び少し思案中の遠藤さん。
『あの、ですね…もし、よかったら…あの、嫌じゃなかったら…ですね、来週の水曜日○○○駅の改札出たところで待ち合わせして、ボクと2人で呑みに行きませんか?』
「へっ?」
予想外のお誘いでびっくりしてしまった。
『あー…あの、こんなん聞いたらセクハラになるんかなぁ。もしかしたら、今、相手さんいはります?』
「相手さん…?」
首を傾けて呟いてしまった。
『あー、分かりにくいか…。あの、今、恋人いはります?』
「イエ。いないです。」
『そしたらどうです?来週の水曜日呑みに行きませんか?』
「はい。行きます!」
『ありがとうございます。そしたら、待ち合わせの時間18時半でどうですか?』
「はい。それでお願いします。」
『あの…念の為に連絡先交換しときませんか?』
「あっ、そうですね。じゃ。」
お互いにスマホのアプリのアカウントと携帯の番号とメールアドレスを交換しあった。
『何かあったら連絡下さいね。』
「分かりました。あの、じゃ、帰りましょうか。」
『そうですね…あの…ここには、車で来はったんですよね?』
「当たり前ですやん。」
思わず遠藤さんの肩を叩いてしまった。
『あいたたたた…これ、骨折れたんちゃう?』
「そんな理由ないですやん。」
『いやいや、これ、絶対折れてますって。』
「じゃ、私の《パワー》で治しましょうか?」
私は、思わず叩いてしまった肩に右手をかざす。そして一言。
「パワー!」
遠藤さんが、ニヤリと笑って一言。
『佐藤さん、合格です!グッジョブ!!』
「それは、よかったです!」
『じゃ、駐車場まで一緒に行きましょう。』
ベンチから立ち上がると、私と遠藤さんは並んで、特に何も話さず駐車場まで歩いた。
(終わり)
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