1人が本棚に入れています
本棚に追加
【仙台から宇都宮】
ひどく災難であった。本来ならば山形から南に行き福島、宇都宮と行く予定であったが、山形の南――昨日訪れた宮内駅よりも南の庭坂駅から福島駅の列車が、現在運航停止しているらしい。なんと間の悪いことか。かなりのロスにはなるが、一度仙台に戻り、それから宇都宮までの新幹線を手配する。このようなことになるならば最初から仙台で宿泊するのだった――いや、そもそも熊野大社に行くのは必然であったし、まずもって旅において不都合を恨むのはお門違いだ。甘んじて受け入れよう。
むしろ今日こそ牛タンが食べられるのかもしれないと期待したが、残念ながら腹が全く減っていない。昼時には二時間ほど早い。それに、昨日訪れた店を調べるとまだ開店まで時間があるようだ。やはり仙台は改めて訪れた方が良いだろうと、己を納得させる。仙台駅で新幹線の切符を発券し、宇都宮まで一気に南下する。途中で郡山と駅名が呼ばれる。そういえば、郡山は福島の街だったか。地図上の知識だけであると、どこどこ県のどこどこ市などと言われたところで何も思い浮かばないだろう。実際にその土地を歩いてこそわかるものがある。もっとも、どこの地域を歩いていても私にとっては等しく「日本」であり、かろうじて名古屋ではないと区別できるのは、車のナンバープレートが仙台だの宇都宮だの、馴染みのない当たり前が存在しているためである。
そうして宇都宮駅に着く。栃木と言えば苺が頭に浮かぶが、宇都宮と言えば餃子が出てくる。偏見と言われてしまえばそれまでだが、駅前に餃子像と呼ばれるものが立っていたことで、やはり餃子の街なのだ――と変に腑に落ちてしまった。
駅を出るとすぐに大通りだ。居酒屋とも餃子屋ともつかない看板が連なっている。甲府駅と近しいものを感じるが、それと同じであれば裏通りは小さな歓楽街だ。その時は少し遠いところに宿を取った結果、客引きに何回か遭うことになってしまった。今回は旅行支援もあったため、駅から近い場所に宿を取ったが――行ってみると、同じブロックにいくつかの店が入っていた。仏頂面の男や軟派な男が店先にいたが、幸いだったのは裏通りにも関わらずそこそこ人通りがあったことだ。治安やら騒音やらはあまり問題ではないが、客引き勧誘ばかりは普通に鬱陶しさを感じる。
最初のコメントを投稿しよう!