不思議の国の貴方

　祖母はよく食べる人だ。誇張ではなく、ボールに手足を付け足したような体型である。アメフクラガエルをご存じだろうか、あれにそっくりなのだ。あのぽてっとしたフォルムや、吊り上がった目や、不機嫌そうな口元。でもどこか可愛げがあるその全てが、祖母そっくりなのである。

　祖母のマンションは私の実家から徒歩十分ほどの所にあるので、幼い頃はよく晩御飯を戴きに伺った。祖母と伯母夫婦と私一家が、広くない居間に寄せ集まって祖母の振るう夕食を戴く。

　自炊の大変さなど知りもしない子どもの時分の私は、あまりその時間が好きではなかった。見たい番組は見れず、ゲームも出来ず、伯母夫婦のおしゃべりに耳を傾けるのは退屈だった。