不思議の国の貴方

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 祖母とゆっくり会話を交わした記憶はない。祖母もそういう性格の人ではないので、勉学に励んでいるのか、家ではちゃんと手伝いをしているのか、そういったイエスノーで答えられる質問をするばかりである。私もその度に簡単な返事をして、祖母はそれで満足していたように思う。  祖母の家でのお食事会は、成長と共に回数が減った。大学に進学するとサークルやバイトを始めた私は、実家の家族と食卓を囲むことも少なくなった。  月に何度も開かれていた祖母のお食事会は、年始の挨拶などの節目の時にしか行かなくなった。しかし従弟が続々と子宝に恵まれ、祖母はひ孫に囲まれて過ごしていたので、あの不思議の国が賑やかだったのに変わりはなかったと思う。
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