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椎名くんの友達になってはや一年と十ヶ月。
突拍子もないことを無表情で始める椎名くんのノリにはさすがに慣れた。
昼休みの教室で、かめ○め波のポーズをされたところでもう驚きはしない。
「椎名くん、超能力者だったんだ」
「早とちりしないでほしい。まだ能力者ではない。可能性を探っているだけだ」
「ふーん」
私は読みかけの小説の世界に戻ろうとしたけれど、やっぱり隣に超能力者がいるかもしれないと思うと気になって仕方がない。お気に入りの栞を挟んで本を閉じる。
「なんで可能性を探ることにしたの?」
「おとといのことなんだけど」
椎名くんは念を込めながら話し続ける。
「やけに大きな突風が吹いたんだよね。それで、近所に住んでる女の子──多分幼稚園児。が泣き出してさ。どうしたんだろうと思ったら、持っていた風船を風に飛ばされたらしくて。木に引っ掛かっちゃったみたいなんだ。それで」
「超能力があったら、風船を取り戻せたかもしれないと?」
「よく分かったな。テレパシストか」
「そこまで聞けば、小学生並みの国語読解能力で探れるよ」
「すげーな。藤川、国語読解能力あるんだ」
私まで超能力があるみたいな言い方すな。
人並みに理解力のある、ただの女子高生です。
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