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3組の沢田くんは、集団の中にいてもパッと目を引くほどの美人だ。
黒い髪に整った目鼻立ち、鋭い瞳は一見怖いけど、彼が誰かと喧嘩をしたという話は聞かない。っていうか、いつもぼっち。彼女の佐藤さん以外、誰も彼には近づかない。
「師匠、今日もバリア張ってんな。やっぱすげえわ」
「話しかけんなオーラ出してるだけじゃない?」
「沢田くーん、4組の椎名くんが呼んでるよ」
クラスメイトの声に沢田くんが振り向いた。恐ろしい顔をしている。瞳で殺されそうだ。
「やべえ。師匠が怒ってる。俺が精神統一の邪魔をしてしまったからか……?」
「びびるくらいならちょっかい出さなきゃいいのに。さてはお前、暇だろ」
椎名くんは沢田くんがツボらしい。すると、沢田くんと何かを話していた佐藤さんがこっちにやってきた。
佐藤さんは優しそうな顔をした普通の女の子だ。ショートボブで普通に可愛い。
「沢田くんが、何か用? って」
「用っていうか、技の出し方を教えてほしいんだけど」
椎名くんは真顔で変なことを言った。
「技? ああ、『おんみつ』のこと?」
佐藤さんは何かを察したようだが、おんみつってなに?
「ああ、おんみつっていうのはね、沢田くんが気配を消して自分を他の人から見えなくしちゃうぼっち技だよ。ほら、今も使ってるよ」
佐藤さんが沢田くんのいた方向を指差した。でもそこには誰も座っていないように見える。
「あそこにいるの? 沢田くん。見えないんだけど……」
「気配を消しているだけ。初めて隣のクラスの子としゃべると思って、緊張しちゃったみたいね」
おいおい。マジの能力者じゃん。
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