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「奉加、奉加ぁ!」
松村が声を張り上げる。
「奉加、奉加! 奉加ぁ」「ほうがー!」
観客が一体となって、掛け声に答えた。熱気が一気に高まる。
「まだまだ、そんなもんじゃねーだろ!」
「ほうがぁ、あ、」「奉加ぁ、あほうがぁ、阿呆がぁ」
観客の掛け声がずれ、「阿呆がー」という熱唱に代わる。
ドラムスがどん、どん、とリズムを上げる。
ステージも、中毒者も、そこには壁は無くなり「阿呆が!」を繰り返す。
これこそパナセアが仕掛けたライブ表現だった。
めでたいを意味する『奉加』。しかし、これを速いスピードで合唱すると、いつの間にか『阿呆』に変わってしまうのだ。そして、その変化には観客の応援があって初めて実現する。
主客の混合。完全なる同化。叫びは、魂は混交して浮揚する。神の薬の名にふさわしいトランス空間が呼び起こされる。
「それじゃいくぞぉ。叫ぶ阿呆に踊る阿呆、歌う阿呆に聞く阿呆! The Last Empress!」
君は 最後の姫
なつかしく 美しく
その声は蠱惑 その息は白く
美声の君は 軽く
白き雪夜に ゆく道は眠り
神の薬に誘われて 最期の歌声は魅惑
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