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この人はそういう人で。 秘書課に配属になって初めて知ったけれど、岩渕室長は板東社長と須崎社長の上司でもあった人でこういう人だった。 「岩渕室長って、次の社長に選ばれててもおかしくなかったですよね?」 私が笑いならそう言うと、「すみません、俺の宝剣が」と宝田がみんなに謝罪していて。 それを見ていた松居会長が何度も頷きながら私を見た後に岩渕室長を見上げた。 「もう少しだけ、俺は岩渕の力を貸して貰う必要があるからな。 俺1人では出来ないことも、岩渕と2人なら出来ることもあるから。」 松居会長が泣きそうな目で岩渕室長を見上げ続ける。 「あの最悪な世界で岩渕が一緒に戦ってくれた。 自分も奥さんを亡くてして死ぬほど苦しかっただろうに、娘と義理の息子が亡くなった俺の最悪な世界の中で岩渕が一緒に戦ってくれた。 俺1人ではとても戦いきれなかった。 会社のことも孫達のことも。 感謝してもしきれない、この感謝をどう返していけばいいのかも分からない。」 「俺も松居先生には感謝してもしきれませんよ。 奥さんが死んだこの世界は今でもずっと苦しいです。 そんな世界でずっと一緒に苦しみながら隣を泳ぎ続けてくれていたのは松居先生なので。 俺だって俺1人では出来ないことだらけでしたよ。」 岩渕室長が優しい笑顔で松居会長の背中をポンポンっと触れた。 そして、それから鋭い目付きになり板東社長と須崎社長の方を見てきた。 「松居会長が退任したら俺がみっちりサポートしてやるからな、それまで気を抜くなよ。」 「「了解です。」」 板東社長と須崎社長の返事が重なった。
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