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そんなお母さんの言葉には驚き、パッと顔を上げた。 そしたら、見えた。 涙と鼻水でグシャグシャになっている顔で、驚いた顔でお母さんを見ているお父さんが。 「俺のこと・・・俺のこと・・・お前、好きだったのか・・・!?」 「何を今さらそんなこと聞いてくるの、どんな嫌がらせよ。 あんた好きだったでしょ、アイドルも看護士も。 だから私はなったでしょ、歌もダンスも下手くそだったのにアイドルになったし、血も苦手だったのに看護士になった。 死ぬほど努力して長峰が大好きなアイドルにも看護士にもなったでしょ。」 「俺が・・・アイドルと看護士が好きだったから・・・?」 「何驚いてるのよ、“あんたの為に今日も歌って踊ってやるから見てな”って毎回言ってたでしょ?」 「でも、それは・・・俺に見せつけてるのかと思ってて・・・。 不細工な俺には真似出来ないくらいアイドルになって沢山のファンに囲まれてる姿を、見せつけられてるのかと思ってて・・・。 だから・・・だから、俺はいつも思ってた。 いつもいつも思ってた・・・。」 そこまで言ってお父さんが号泣した。 「“あとは何があればよかったんだろう”って、思ってた・・・!!! あとは何があればお前の前に立てるのか、お前に“好き”だと伝えても笑って貰えるくらいになれるのか!! 俺みたいな不細工な男が!!! 俺は不細工だから・・・!!! 俺はこんなにも不細工だから・・・!!!」 お父さんのそんな叫びに私は驚いて涙が止まってしまった。 そしたら、私の隣に座る宝田は号泣し初めていて・・・。 「だからあんなブッサイクな顔で私のことを見てきてたの? 昔はもっと格好良い顔で、自信満々な顔で私のことを見てきてたのに。 だから私も努力して、そんなあんたに告白して貰えるような女になろうと思ってアイドルにも看護士にもなったのに。 “あと何があれば”なんて、そんなの簡単なことでしょうが。 自信満々な顔してなさいよ、“正しい仁”を成すことの出来る正仁はいつだって誰よりも格好良いんだから。」
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