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「駿、頑張れ!!あと1回!! 器用なお前なら特別賞狙えるだろ!!」 宝田と私の番が来て、多くの人達に見守られながら2人でガラガラをしていくけれど、箱ティッシュの玉ばかりが出てくる。 そんな私達に商店街の会長が・・・会長というより、宝田のお父さんがそんな難しいことを言ってきた。 「ガラガラに器用とかないでしょ、父さん。」 「コレばっかりはお前にも無理か・・・。」 宝田のお父さんが残念そうな顔をして少し俯いた時・・・ 「竜!代わりに回してみなよ!」 と、いつからいたのか私のお父さんが竜さんにそう声を掛けた。 「俺ですか!!? いや、無理ですってこういうのは!! 俺はくじ運とかないですし!!」 社長というくじは引けた竜さんがそんな弱気なことを言っている。 「竜なら大丈夫だよ、そういう星の下に生まれた男だから。」 お父さんが力強くそう言うと、竜さんが渋々前に出てきた。 「最後の1回、俺が回してもいい?」 「「全然いいよ。」」 宝田も私もそんなにムキになってガラガラをしていないので、すぐに竜さんに返事をした。 竜さんは何故か深呼吸を繰り返し、これから殴り合いの喧嘩でもするのか準備運動まで始めてしまい・・・。 それに周りの人達・・・やけに集まってきた人達が竜さんを応援しだした。 そこには私と宝田のお母さん、弟と妹、幼馴染み達、和や結子の姿まである。 結子は私の視線に気付き、「増田君とテレビ電話で繋がってるよ!」と可愛すぎる笑顔で言ってきた。 そんな盛大なガラガラになってしまい戸惑っていると、竜さんがガラガラの持ち手をゆっくりと持った。 そして、商店街は静まり返った・・・。 竜さんがゆっくりと回すガラガラの音だけが響き渡り・・・ 出てきた・・・。 出てきた・・・。 最後の1回、その玉が出てきた・・・。 3等の赤色でも2等の銀色でも1等の金色でもない。 参加賞の青色でもない。 出てきた玉の色は・・・ 玉の色は・・・ 真っ白だった・・・。 まるで今降っている雪のような白・・・。 “ゆきのうえ商店街”の特別賞である、白色だった・・・。
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