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倒れても倒れても、起き上がりこぼしのように立ち上がって構えなければいけないが、雪だるまがいくら必死に動いていても格好よくは見えないだろう。
さらに敵からゴールを守れなければどんどんマイナス点が追加され、攻められれば攻められるほど疲労する。動きも鈍くなり、神経が擦りへって、伸びきった靴下の足首のゴムみたいになるのだ。
プレイヤーは違う。シュートが外れてもマイナスにはならないし、実力であっても運であっても入ればプラス一点だ。攻めれば攻めるほど士気が上がり、チーム全体のモチベーションも上がる。
いいなあ……俺はプレイヤーになりたい。
「おい、蒼生さぼんなよー」
迅也がスルスルと氷の上を滑ってやってきた。
ゴールの前でさぼっているはずなどない。佇んでいただけだ。
迅也は同じ中学二年生のフォワードでセンター。バスケでいえばポイントガード、司令塔みたいなやつで、上手いだけでなく賢くなければいけない。名前どおり、迅速な攻めが強み。ゴール目がけて氷の上を翔ける姿はめちゃめちゃかっこいい。雪だるまとは大違いだ。
「さぼってねーよ。ゴールを守ってただけ」
迅也が瞬時にスティックの先でパックをひょいっと持ち上げて、俺の後ろ側のゴールネットに入れた。手首のスナップがよくきいてるよ、お前はいつも。
「どこを守ってるって?」
「……今は休憩中」
「それをさぼりってゆーんだ」
迅也はスピードだけでなく、ハンドリングも細かく正確でテクニシャンだった。俺はゴールキーパーなのでハンドリングはあまり上手くはない。そもそもスティックでの練習量も違うし、ゴーリーのスティックとプレイヤーのスティックの使用方法は全く異なるものだった。ゴーリーでも陸上練習で、プレイヤーのスティックを使うこともあるにはあるのだけれど。
「たまにはプレイヤーになりたいな」
ボソッと呟いたのを迅也は聞き逃さなかった。
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