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「仕方ない。プレイヤーをさせてやろう」
そういって中学生の俺と小学五年生のゴーリー涼介は、低学年の小学生たちの前に立ちはだかった。小学生と中学生が一緒に練習することはほとんどないが、時間帯が重なっていることはよくあり、メニューによっては協力し合うことになっている。
だが何か違う……そう思いながら俺は低学年たちに立ち向かい、一心不乱に走り回った。雪だるまのような格好のままなので、足のレガースは重いし、手につけたグローブも重いし、走りづらいことこの上ないのだが、なぜか腹の底から笑いが込み上げてきた。
「おらぁ、スノーマンだぞぉ!」
低学年たちは大喜びで笑い転げ、足を止める選手続出。しめしめ、俺が走ってるだけで半分は成敗してやった。
よちよち歩きの初心者も多かったが、残っている二年生や三年生たちはわりとすばしっこいので、彼らは笑いながらもしっかりとスケーティングしている。真面目に相手をしていたら小回りでは負けてしまうだろう。
こいつらを止めるには、手足の長さを使わない手はない。こちらの方が何倍も体が大きいのだから手段は選ばない。
ひょいっとゴーリーのスティックを伸ばせば、簡単に彼らのパックを横取りできた。
「くっそぉ!」
二年生と三年生たちが笑いながらも加速して追いかけてくる。上手な一年生もいて、バックチェックで体にぶつかってきたが、何もしなくとも勝手に跳ね返ってくれた。最強スノーマンだぜ、俺。
よし、このままゴールに向かって速攻だ。ゴーリーをなめるなよ。雪だるまだって走れるんだ。
前方に涼介が見えたので、スティックを大きく振ってパスを出した。そして自陣へと猛ダッシュで舞い戻った。涼介の前に迅也が見えたからだ。
涼介よ、雪だるまではさすがに迅也は抜けまい。すまないな、俺のために犠牲になってくれ……
迅也がパックを持ったら最後、秒でリンクの端から端まで駆け抜ける。あいつは背中に羽が生えているか、サーファーのように波に乗っているかのどちらかだ。
予想どおり涼介はあっという間にパックを奪われ、すでに迅也はこちらへと向かっていた。ぎりぎり間に合ってゴールの前で構えることに成功。よし、どこからでもかかってこい。っておい、もうバッティングの構えしてたぁ~ヤバいぞこれ。
バッティングというのは、思い切りスティックを後ろへ引いてから振りかぶるシュート方法。野球のバッティングよりは、ボーリングの球を投げる瞬間に似ている気がする。
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